2008 4/5(土)—6/15〔日〕
休館日=火曜日 4/29・5/6は開館します
大正期に活躍し、近代日本の洋画史のなかでもきわだって強烈な個性を放った画家、岸田劉生。その名とともに、愛娘麗子を描いた作品はいまなお広く世の人の忘れがたい記憶となっています。
劉生は1891(明治24)年、東京銀座に、新聞人であり事業家でもあった岸田吟香の四男として生まれました。14歳で父母を失って中学を中退しましたが、17歳のとき洋画家黒田清輝に師事。文芸雑誌『白樺』の同人らと交流しつつゴッホやセザンヌといった後期印象派の影響を受けます。在野の美術団体『草土社』のリーダーとして活躍しながら、北方ルネサンスの精緻な写実表現を吸収してゆくなかで、物の奥深い実在に迫ろうと、作家自身いうところの「内なる美」の探求へと向かいます。そして30歳を過ぎた頃からは一転して宋元画や南画、浮世絵などに魅せられ、東洋的な美意識の表現へと変貌してゆくのですが、病魔によって断たれた38年という短い生涯だったにもかかわらず、その画業は激しく変化する求道の軌跡だったといえましょう。
岸田劉生といえば、独特な神秘性を漂わせる濃密な油彩画をもって思い浮かべられがちですが、本展では油彩画作品14点をはじめ、油彩画制作以外の領域で、やはり劉生が力をそそいでいた日本画、素描や水彩画、書籍の装丁のために描いた図案、版画作品など、これまで紹介される機会の少なかった作品群をあわせ、約120点によって構成いたします。
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