10/29日(土)-12/24(日)
休館日=火曜日
「浮世絵」という呼び名のもとをたどると、浮き世、憂き世のことをあらわした絵、という意味であるといわれています。世の中や人生の、つかのまのひとときを描いた光景とでもいいましょうか。歴史考証などと堅い話は横に置いといて、浮世絵の作品を見ながら、江戸のひとびとの暮らしが如何様であったかを想像するのは楽しいことです。
宿場から宿場へと、ゆく道中の風景、哀愁と旅情、旅先で出会う人情の機微、江戸美人の艶姿、歌舞伎の千両役者、土俵の英雄、びっくり仰天の妖怪変化、幕末期横浜の風情をつたえる港の風景、洒落とユーモア・・・・ 市井の民ならば旅がしたくても現代ほど容易にはかなわず、テレビもインターネットも存在しなかった時代に、ひとびとは、浮世絵の刷り物を手に、行ったことのない遠くの地に思いを馳せ、あるいは贔屓の役者に胸をときめかせ、またあるいは今でいうSFホラー小説の世界に心躍らせたことでしょう。
近世の江戸という都市で、浮世絵が、庶民の情報メディアとして喜ばれ育まれながら、世界に類例のない独特且つ高度な芸術として成熟し、また、時を経て、その巧みな画面構成や、輪郭線と平面的色彩による造形表現が、のちの西洋近代絵画に衝撃を与えたことは有名なエピソードのひとつです。本展は、歌川広重の、旅のシリーズとして名高い「東海道五拾三次」、同じく広重の「五十三次名所図会」、葛飾北斎の小判「東海道五十三次」を一堂に公開します。またそのほかにも、歌麿、写楽、豊国ら浮世絵界の大立者たちが描いた名作傑作怪作あわせて約二百三十点を展覧いたします。
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