MARC CHAGALL
2012年6月23日(土)-9月2日(日)★会期中無休
版画作家としてのマルク・シャガール(1887-1985)を考えると、版画の技法を身につけたのが30歳代半ばになってからということなので、その出だしが比較的遅かったのは案外なことのように感じられます。しかしながら、ほとんど一世紀に及ぶ生涯を通じて衰えを知らない創作意欲を維持し続け、油彩画はもちろんのことモザイク、タピスリー、ステンドグラス、陶器、舞台装飾など多岐を極める活動を繰り広げ、版画をかぞえただけも2000点もの作品を遺したのですから、やはり凡百の画家を凌ぐ大作家シャガールであったといえましょう。
1941年、第二次世界大戦という戦乱の世にあって、フランス政府がついに採択した人種法によりフランス国籍を剥奪されたシャガールは、その前年から受けていたニューヨーク近代美術館からの招聘の申し出に応じるかたちで家族でアメリカに亡命した。英語圏での異邦人としての暮らしに落ち着きを感じられないながらも、同じように亡命していた芸術家仲間や美術界の友人たちに支えられながら制作に励むシャガールだった。そして1944年9月のパリ解放のニュースに歓喜するさなか、ともに帰国するはずの夢を果たさぬまま、苦楽を共にしてきた最愛の妻ベラが急逝した。シャガールの悲しみは大きく、そののち何カ月も絵筆を握ることができなかったという。
本展を構成する作品は、それ以降、悲しい試練を乗り越え、やがて世界的巨匠として最高の賛辞をもって人々に愛されるようになったシャガールが、人生の後半期に世に贈った7つの連作版画である。 またこれらに併せて、祖国ロシアをあとにして、ヨーロッパで筆で身を立てる方途を模索していた1920年代のものと思われる、シャガールが画家として大成する以前の初期版画作品5点を展示いたします。
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