La Peinture Française dans la Société Bourgeoise Une Fresque Humaine du XIX Siècle
1994年4月9日(土)-5月9日(月)
休館日 火曜日、5月6日[金] (5月3日[火]は開館します。)
18世紀が終ろうとする世紀の節目に革命によって産声をあげた近代フランスの市民社会は、つづく19世紀に政治的な動乱や産業のかつてない急速な発達といった社会的動揺を経験しながら徐々にその性格をととのえつつ成熟しました。世紀のなかばから後半に至って、フランスは当時の世界で民主主義をリードする国家として指導的地位を獲得するに至ります。それまで社会の、いわば特権階級であった貴族や僧侶・封建領主がかつてのような権勢を失い、かわって社会の重要な構成員として市民層の人々があらわれたのがこの時代のことでした。封建社会の桎梏は過去の出来事となり、「自由」あるいは「平等」といった新しい道徳観、新しい社会観を生まれながらにして心に携えた彼ら市井の民衆は、資本主義経済の発達とそれによる市場の活発化もあっていよいよ拡大してゆく都市の繁栄の中で、あるいは家庭の普通な団欒の場で、労働の場に於いて、豊かな生活を享受し多様になった娯楽を楽しみ、またあるいは繁栄と虚飾の裏側で展開する社会のひずみ、貧困や悲惨にあえいだりしながら時代の世相を成形してゆきます。本展ではこうした19世紀フランスの社会に生きた人々の営みを、絵画とりわけ風俗画によって幅広くたどろうとするものです。社会の趨勢とともに、芸術が生まれる土壌も変化してゆきます。世紀の初頭から中葉にかけての絵画の世界で、古典派とロマン派という二つの主義が対峙しながら君臨し、やがて硬直化してゆくなかで、教会や貴族の注文に支えられる職人であったはずの画家たちはもはや個人の芸術的創意という新しい原動力を得た一人の芸術家として、個人として個人の視野から物事をみつめ、制作することをはじめました。そして多くの画家が自分がまさに生きている19世紀の “現代”に画題をもとめて画布にむかいました。画家の関心の対象は、同時に人々の関心の対象でもあるといえますが、そうしたことが風俗画の分野での多彩な展開へとつながります。画家達の鋭敏な眼は、様々な切り口から彼らの社会の有様をとらえ、作品を通じて現代の私達にいきいきと語ります。
本展はパリのプティ・パレ美術館、カルナヴァレ美術館、マルモッタン美術館をはじめ、リヨン美術館、ルーアン美術館、ディジョン美術館などフランスの各地方を代表する美術館、あわせて15館の所蔵品から、油彩、水彩、版画など110余点によって構成します。絵画にあらわされた近代社会のあらゆる側面、そこで繰り広げられた人々の喜びや悲しみを展望する素晴らしい機会となることでしょう。
[講演]「19世紀フランス絵画の流れ」 山梨俊夫 氏(神奈川県立近代美術館学芸課長) 4月10日(日)午後1:30より河口湖美術館ギャラリーにて
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