1994 11/2(水)-12/25(日)
休館日 火曜日,11/24(木)
パリのモンマルトルの丘にあるラクリエール工房は、国際的にも有数の実績を誇る銅版画の工房として60年の歴史があります。創始者であるロジェ・ラクリエール氏、その後を継いだジャック・フレロー氏、ロベール・フレロー氏はいつの時代においてもその技術と人柄とによってラクリエール工房(L'Aterier Lacouriere-Frélaut)の伝統をさらに輝しいものとしてきました。
この工房が手がけた、ピカソ、ブラック、マティス、ルオー、シャガール、デルボー、デュビュッフェといった画家たちとの信頼の上に制作された諸作品は、極めて完成度の高いものです。そして、スキラ、ヴォラールをはじめとする有力な版元たちは競ってラクリエール工房に協力を求め、多くの傑作を生みだしたのです。ラクリエールの歴史は、こうした画家たちとの研鑽の歴史であり、版画の世界でこの工房が果たしてきた役割はたいへんに大きなものがあります。本展はこの工房で制作された主要なポートフォリオ(組版画)、単品版画を中心に、刷りの諸段階における版画、刷り直しの指示や校了済みのサインなどが記された画家と刷り師とのやりとりの人間的な側面が見られる版画もあわせて約300点により、工房ならではの展示をいたします。また、画家の制作中を写した貴重なフィルム、スナップ写真、未発表の書簡、メモに至る資料も豊富に展示、そして工房の雰囲気を再現するような道具類もあわせてお見せする予定です。
多くの画家をエコールではなく、工房というひとつの視点から俯かんすることになるこの展覧会は、いわば1930年代以降のフランスを中心とした版画の潮流を一挙に展観するものです。また、職人たちとの交流から画家たちの思いがけない人間性にふれることもできます。この日本初公開のラクリエール工房の貴重な作品や資料の数々によって、深い芸術的感動と新鮮な驚きがみられるでしょう。
関連行事=会期中の土曜日と日曜日に、会場内の仮設工房で銅版画制作の実演を行います。
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