1996年 6/22(土)-9/2(月)
会期中無休
紀元前のエーゲ海地方でギリシャ文化が華々しく栄えていた頃とはば同じ時期に、イタリア半島中部を支配していたのはエトルスクと呼ばれる民族でした。この民族は12の都市からなる同盟を形成して大いに繁栄し、紀元前7~5世紀頃に最も栄え、やがて衰えてローマに吸収されます。エトルスクは制度や宗教、各種の技術などでローマの社会や文化に少なからぬ影響を及ぼしたといわれます。エトルスク人は、ギリシャ文明の強い感化を受けながらも、単にその亜流にとどまらない個性的な芸術を生みました。有名なブロンズ彫刻「牝狼」像や、怪獣「キマイラ」像は、エトルスク人の手によるものです。ギリシャの芸術が理性的、構築的であり、典型的な美への追求であったのに対し、エトルスクの芸術は情緒的、ときとして享楽的であり、現世的な喜びを讃えるものでした。またエトルスクの、死者を葬るための地下墳墓に描かれた装飾壁画の数々は現存する古代の絵画作品として特筆すべきもので、ギリシャの絵画が陶器画を除いてほとんど全く失われてしまった今日、ヨーロッパ絵画の原形をうかがううえで誠に貴重な資料であるといえます。本展は、エトルスク墳墓の壁画を一年余りかけて撮影した写真家岡村崔(おかむらたかし)氏の撮影フィルムを基に、16基の墳墓壁画を原寸大写真によって展示するほか、陶器40点、地下墳墓の模型3点によりローマ帝国が地中海世界を制覇する以前のイタリアの支配者、エトルスクの芸術を紹介いたします。
記念講演 講師=岡村崔 (写真家)8月10日(土)13:30より
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