1997 3/29(土)-5/11(日)
休館日 4/1,8,15,22,5/6
洋画家、水彩画家で、また木版画家としても知られる福岡県久留米市出身の吉田博(1876-1950)は、明治・大正・昭和を通じて文展や帝展の重鎮として活躍した近代洋画壇の巨匠のひとりです。小山正太郎主宰の画塾不同舎で、中川八郎や満谷国四郎、鹿子木孟郎らとともに学び、若くして頭角をあらわした俊英吉田博は、やがて明治洋画界を二分した新旧の争いの、旧派の若きリーダーと目されるようになります。次第に体制としての権力を集中してゆく黒田清輝率いる白馬会系の新派と、ことごとに悲哀をなめ続ける不同舎などの明治美術会系の旧派とは、様々な局面で衝突したといいます。旧派のリーダーを自認する吉田博は、常にその先頭に立ち、不同舎仲間と新たに結成した太平洋画会を基盤に対抗姿勢を強めながら同時に、高い技術のリリシズムあふれる風景画を次々と発表し続けます。明治47(1907)年、文展が創設されると、反体制の旧派であるにもかかわらず、吉田博は第1回展から第3回展まで連続して受賞し、ついに、第4回展からは審査員に任ぜられました。以後、吉田博は反体制の精神を貫きながら、一貫して文展・帝展の頂点を歩み続け、近代洋画壇の一方の雄として、日本近代美術史に大きな足跡を残したのです。
本展はこの吉田博の初期から晩年までの多数の秀作の中から、初期の水彩画、中期の油彩画、後期の木版画の3部門の代表作約140点を精選して展観する初の大回顧展です。日本人特有の自然への畏敬の念と愛着、人と自然の親しい調和への願い一清新と叙情味あふれるその優れた風景画の数々は、現代に生きるわれわれが忘れがちな、自然への郷愁を再びよみがえらせてくれるに違いありません。
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