1999 7/24(土)-10/24(日)
休館日=10/5、10/12、10/19
ある時、パレットの代用品として使っていた石版石の表面にあらわれた偶然の映像が心の琴線に触れ、手刷りで転写したのが版画制作の始まりだった、と作家自身が述懐しています。それは一原有徳が40歳を過ぎてからの出来事でした。以来今日まで、一原有徳は様々な素材を版として用いながら、モノタイプという一回の印刷だけが可能な“版画”で独自の境地を示し、版画技法の範疇を逸脱するかのような実験的手法に取り組みつづけ、日本の現代版画を代表する一人として高く評価を受けるに至りました。
一原有徳が創り出す抽象的とも超現実的とも解釈しがたい、イメージの大群は、圧倒されるような強烈な視覚体験を鑑賞者にもたらします。現実には存在しない架空のオブジェ、どこまでも果てしなく広がってゆく虚構の風景、物質そのものの触感だけを写しとったかのような生々しい跡、分裂を繰り返しつつ増殖していく生物の細胞のような・・・。
具体的な何かを描きあらわそうとする意図ではない、そのイメージが何を意味するのか言葉で言い当てるのは困難な、しかし優れて美的な、終わることなく連続する夥しい数の作品群・・・。それは、制作という行為の、あるひとつの原初的な形態を体現しているといえるのではないでしょうか。
本展は、神奈川県立近代美術館のコレクションを主体に1960年代の作品から最近の作品まで約300点によって構成し、版画家・一原有徳の世界を展望いたします。
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