EXHIBITION

グリム兄弟展 -カッセル グリム兄弟博物館所蔵

2006 4.1(土)-5.21(日)
休館日 火曜日 5/2は火曜日ですが開館します。

星の銀貨
むかしむかし、小さい女の子がありました。この子には、おとうさんもおかあさんもありませんでした。たいへんびんぼうでしたから、しまいには、もう住むにもへやはないし、もうねるにも寝床《ねどこ》がないようになって、とうとうおしまいには、からだにつけたもののほかは、手にもったパンひとかけきりで、それもなさけぶかい人がめぐんでくれたものでした。でも、この子は、心のすなおな、信心のあつい子でありました。それでも、こんなにして世の中からまるで見すてられてしまっているので、この子は、やさしい神さまのお力にだけすがって、ひとりぼっち、野原の上をあるいて行きました。すると、そこへ、びんぼうらしい男が出て来て、「ねえ、なにかたべるものをおくれ。おなかがすいてたまらないよ。」と、いいました。女の子は、もっていたパンひとかけのこらず、その男にやってしまいました。そして、「どうぞ神さまのおめぐみのありますように。」と、いのってやって、またあるきだしました。すると、こんどは、こどもがひとり泣きながらやって来て、「あたい、あたまがさむくて、こおりそうなの。なにかかぶるものちょうだい。」と、いいました。そこで、女の子は、かぶっていたずきんをぬいで、子どもにやりました。それから、女の子がまたすこし行くと、こんど出て来たこどもは、着物一枚着ずにふるえていました。そこで、じぶんの上着《うわぎ》をぬいで着せてやりました。それからまたすこし行くと、こんど出てきたこどもは、スカートがほしいというので、女の子はそれもぬいで、やりました。そのうち、女の子はある森にたどり着《つ》きました。もうくらくなっていましたが、また、もうひとりこどもが出て来て、肌着《はだぎ》をねだりました。あくまで心のすなおな女の子は、(もうまっくらになっているからだれにもみられやしないでしょう。いいわ、肌着もぬいであげることにしましょう。)と、おもって、とうとう肌着までぬいで、やってしまいました。さて、それまでしてやって、それこそ、ないといって、きれいさっぱりなくなってしまったとき、たちまち、たかい空の上から、お星さまがばらばらおちて来ました。しかも、それがまったくの、ちかちかと白銀色《はくぎんいろ》をした、ターレル銀貨でありました。そのうえ、ついいましがた、肌着をぬいでやってしまったばかりなのに、女の子は、いつのまにか新しい肌着をきていて、しかもそれは、この上なくしなやかな麻《あさ》の肌着でありました。女の子は、銀貨をひろいあつめて、それで一しょうゆたかにくらしました。
星の銀貨 DIE STERNTALER グリム兄弟 Bruder Grimm 楠山正雄訳 底本:「世界おとぎ文庫(グリム篇)森の小人」小峰書店 1949(昭和24)年2月20日初版発行 1949(昭和24)年12月30日4版発行「旧字旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。入力:大久保ゆう 校正:浅原庸子 2004年6月16日作成 2005年11月12日修正 青空文庫作成ファイル:このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。


むかしむかし、ヤーコプとヴィルヘルムという仲のいい兄弟がありました。二人は、古い資料や、お年寄りなんかが話して聞かせるあちこちのいろいろなお話を苦労してあつめ、それを世の中の人が読めるように本にしました。
世にいう『グリム童話集』には200以上の話が収められています。みなさんはそのうちのいくつぐらいをご存知でしょうか。「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「シンデレラ(灰かぶり)」「ブレーメンの音楽隊」「白雪姫」... そもそも「グリム童話」とは、19世紀初頭に学者であり言論人だったグリム兄弟が、収集し体系的にまとめあげたドイツ各地の民間伝承や口承文学なのです。こんにちの我々が、気が付いたらいつのまにか知っていたあれらの話も、もとを辿れば1810年代に兄弟によって出版された『子どもと家庭のメルヒェン集』という童話集がその源泉なのです。
世界中で語られ、欧米では聖書に次いで広く読まれている書物とさえいわれるグリム童話。親から子へ、祖母から孫へ、教師から生徒たちへ、国境をこえ世代をこえ、いまなお人びとに夢を与えつづけているかずかずの物語。これも我々人類が共有できた無形のさいわい、貴重な財産の一つといってもいいのではないでしょうか。
本展は、カッセル(ドイツ)のグリム兄弟博物館が所蔵する、メモリー・オブ・ザ・ワールド(文献の世界遺産)に認定された書籍資料をはじめ、19世紀から現代にいたるグリム童話の挿絵や復刻本、兄弟の愛用品や直筆の手紙などの資料約290点を展示し、グリム兄弟の生涯やその業績をたどります。

メモリー・オブ・ザ・ワールド(文献の世界遺産)
2005年6月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の国際諮問委員会(略称IAC)は、カッセルグリム兄弟博物館が所蔵する「子どもと家庭のメルヒェン集」初版本など 計16点を、メモリー・オブ・ザ・ワールド(文献の世界遺産)に認定しました。現在160 以上の言語で翻訳出版されているグリム童話の価値と、グリム兄弟が所有し、自筆の書き込みも加えた、唯一無二の史料であることが評価されての登録です。メモリー・オブ・ザ・ワールドは、1997年にユネスコが、戦争や革命、火災、水害、酸による劣化などのために失われつつある貴重な文献遺産を世界規模で保護し、保存することを目的に開始したプログラムです。メモリー・オブ・ザ・ワールドは2年ごとに開催される国際諮問委員会で選考されます。これまでに、ドイツの「ゲーテの遺書」や「ベートーベン交響曲第九番自筆原稿」など120件が選定されています。


ミニコンサートのお知らせ
クレッグ・アークハート ピアノソロによるミニライヴ Craig Urquhart Piano Solo
4/7(金) 14:00-14:30(予定) ご入館いただいたうえでどなたでもご参加いただけます。

展覧会基本情報

Exihibition Information

会期
2006 4.1(土)-5.21(日)
休館日 火曜日 5/2は火曜日ですが開館します。
会場
河口湖美術館
開館時間
9:30-17:00(入館は16:30まで)
入館料
大人・大学生800(720) 高校生・中学生500(450) カッコ内は8名以上の団体料金
主催
河口湖美術館/毎日新聞社
協賛
KUMON
後援
ドイツ連邦共和国大使館/ドイツ観光局
協力
カッセル グリム兄弟博物館/全日本空輸株式会社
〔学術協力〕虎頭惠美子

これまでの展覧会

SINCE1991.04.14